法政の逆襲21〜豹変〜

北大と樽商を踏みつけ、高笑いするICU。
CIT「誰か、通信機を持っていないか!?」
電通「そんなもの、どうするんだい?」
CIT「ICUの父親、スワースモアと連絡を取る。彼なら何か知っているかも…」
ICU「残念ですが、もう彼はこの世にいない…」
CIT「何だと!」
ICU「先程、スワースモアは思念を飛ばし、私を精神世界へと誘い込んできました。返り討ちにしましたがね…」
CIT「くっ…!あのスワースモアの精神力をも上回るとは!」
法政「思念?精神世界?…いったい?」
CIT「私やMITが科学力で戦うように、スワースモアやアマーストは精神力で戦う。
    並の大学なら、スワースモアに思念を送られるだけで狂い死にしてしまう…」
ICU「しかし、私は生きている。精神から攻めても私は倒せないのですよ」

絶望が周辺を包む。
ICU「情けない事です。これほどの数でも私を傷つける事さえままならない…」
豊橋「その通りだ!」
岐阜「ICU様に素直に従うのだ!」
名工「道は一つ!」
中央(チッ…あの三人、神官気取りかよ…)

ブオオオオッ!!!

ICUが手から出した光で三校が消えていく。
岐阜「う、うわあ!」
名工「な、何で…」
豊橋「あんたが俺達を呼んだんじゃないか…!」

甲南「自分で連れてきた援軍を殺しやがった…」
慶應「従っていた者まで殺すとはな。ICU、お前はただの殺人狂だ!!」
ICU「日本に大学は一つでいい。そう、たった一つでね…」

〜ICUの爆弾発言〜
ICU「日本はこの私、国際基督教大学だけで充分!」
九大「バカな…!」
東北「お前はいいが、困るのは受験生だぞ?どうやって日本全国をカバーするんだ!!」
ICU「最初のうちは仕方ありません」
東大「最初のうち…?」
ICU「どんどん増やしていきます。子孫をね…」
京医「子孫?女子大だけ生かしておいて、子供を産ませるのか?」

その瞬間、女子大から相次いで非難の声が出る。
お茶の水「ふざけんじゃないわよ!舌噛んで死んでやるから!」
京女「嫌どすえ」
本女「誰があんな奴の子なんか…」
東女「どうせなら慶應さんと…じゃなくて、死んでやるわ!」
奈良女「私も死にます」
法政(ICUも恐ろしいが、女も恐ろしい…くわばらくわばら…)

ICU「安心したまえ。私は紳士だから、心配しないで欲しい」
法政(そういう問題か…?)
ICU「自分の子孫は自分で作る、という事ですよ…」
東大「何ィィィィィィィィ!!!???」
法政(東大さん、驚きすぎ…)
ICU「私が先程大学を吸収した時、女子大も混ざってました。ようするに、私は男であり女でもあるんですねぇ…」
京医「雌雄同体という訳か…」
ICU「そんな単純な言葉でくくれる存在ではありませんがね」
慶應「そんな事が許されると思うのか!!」
ICU「大学が一つになる以上、もう学歴差別は起こりえません。全員同じ大学なのですから…
    もちろん同じ大学でも学部間での格差は存在します。この際、学部はなくしてしまいましょう」
中央「学部が無くなったら、メチャクチャになるぞ…」
ICU「好きずきに学べば良いのです。好きな事をね…無論、常識の範囲内でですが…
    どうしようも無い学生には消えてもらうシステムです。そこは非情になりませんとね。
    まあ、便宜上学部名をつけましょう。“平和学部”とでも名付けておきましょうか」

〜神戸の形見〜
自分の計画を語り終わり、再び恍惚とした笑みを浮かべるICU。
周囲の大学はただ呆然としていた。絶望の為か、ICUの無茶な思想の為か、それぞれの理由で。
ICU「…どうしました?すっかり静まってしまって…」
東大「(ここは私が先頭を…)私が相手を―――――」
CIT「待て」
東大「CITさん…」
CIT「お前は死んではならない。この場で奴をまともに相手出来るのは私だけだろう。
    私が戦っている間に…対策を考えてくれ」
東大「分かりました…」
CIT「私が相手をしよう。“CITナパーム”!!」

ズドォォォォン!!!!!

ICU「(クッ…七武神だけあって、大した威力だ…)面白い、まずは君からにしますか」

京都軍基地内部―――――
京大「設置終了。よおし、奴らを皆殺しにしてやる…」
京大は兵器についているいくつかの装置をいじり、エネルギー充填を開始した。
京大「やっと…やっと京都の時代が…」

外ではICUとCITの戦いが続く。
京医「く…ICUが押しているな…」
京医は手を握りしめた。その時、手に痛みが走る。
京医「つッ!これは、神戸のナイフか…妙な形だが…(ん?何か書いてある…)」



京医( こ れ は ! ! )


〜当たって砕ける〜
奮闘空しく、ついにCITも力尽きる。
CIT「く…ここまでか…」
ICU「あっけないですねぇ」

東北「このままじゃ…」
九大「………」
東北「私は行くぞ。あいつは戦友なんだ」
九大「待て」
東北「なに?」
九大「私だけで…いい…ゴホッ!」
咳をした九大の手には、大量の血がついていた。
九大「言ったろう?俺の命はあと一日。もうどうしようも無いのだ」
東北「だが、医大達に診せれば…!」
九大「いいんだ。九州の大学は全滅してしまったし、もうこの世に未練はない…。
   最初で最後の宇宙旅行も出来たし、なかなか良い一日だった…」
東北「よせ…」
九大は京都軍基地に向かって叫ぶ。
九大「京大ッ!!お前は俺を利用していたつもりだろうが、なかなか楽しめたぞ。
   ありがとうよ!!」

九大はICUへたち向かっていく。
九大「うおりゃああああああ!!!!!」
ICU「さっきから皆さん、よほど自殺が好きなようですね。美徳とでも思っているんでしょうか?

ドガァッ!

九大「きゅ…うしゅ…う…」
これが九大の最期の言葉となった。

〜CIT最後の光〜
CITが電波を使って話しかける。理系同士だから出来る芸当である。
CIT『電通…頼みがある…』
電通『なんでしょう?』
CIT『一瞬でいい…奴の動きを止めてくれ!』
電通『分かりました』
CIT『最後に私が日本の味方になった真の理由を教えよう…』

ICU「次は誰にするか…なッ!?」
電通「“弛緩電波”!」
ICU「筋肉が思うように動きませんね…だが、これしきで…」
その隙にCITがICUの懐に近づく。
ICU「しつこいですね…」
CITは自分の手で自分の胸を貫いた。大量の血が流れる。
ICU「また自殺ですか?しかも、正真正銘自らの手で…」
CIT「私の血がついてしまって大変だな、ICU…」
ICU「汚らわしい血ですが、我慢してあげますよ」
CIT「私の血は………ガソリンだ。それも特別製のな」
ICU「なにッ!(く、動けん…!)」
CIT「九大には悪い事をしたな…私を庇った意味がなくなってしまった…」
CITは火をつけた。当然、大爆発が起きる。

   「うわ…!」   「すごい!」   「眩しい…」   「爆発だ!」

「凄い音」   「逃げろ…」   「CITさん!」   「自爆!?」   「ぐお!」

   「死ぬ…」   「うわぁ!!」   「危な」   「そんな!!」

爆発はやがて静まり、辺りには煙だけが立ち込める。
ICU「ぐはァッ…CITの最後の大技というわけですか…ぐぶッ」

〜ピピピ〜
大量の煙が立ち込め、辺りは混乱する。
そして混乱の中、法政・電通お茶の水の三人が揃い、電通が静かに話し始める。

電通「法政、今回の戦争で数少ない得られた事の一つは君と出会えた事かな」
お茶の水「私は!?」
電通「勿論、君もだよ。平和だったら拙者達は大した交流もなかったままだろうしね」
法政「電通さん…?」
電通「ピピピ…ピピピ…」
法政「何でレーダーを…?」
電通「何とか、この煙の中でもレーダーは使えるようだ。東大達はあっちにいる。早く行きなさい」
法政「え、でも…」
電通「早く!!」
お茶の水「アンタはどうするのよ!?」
法政「行こう、お茶の水。…電通さん!」
電通「ありがとう…法政」

電通には分かっていた。煙の中をICUがまっすぐ電通に向かってきている事を…
電通「レーダーってのは便利だけど、自分が死ぬ事まで分かっちゃうとはな…」

ICU「私の筋肉を弛緩させるとは、下らぬ事をしてくれました。おかげで予想外のダメージですよ…」
電通「君の敵だからね、拙者は」
ICU「なぜ逃げなかったのですか?」
電通「逃げるのは嫌いなんでね」
ICU「死ぬのが怖くないのですか?」
電通「怖いよ」
ICU「私に勝てると思っているのですか?」
電通「可能性は“なきにしもあらず”ってところだろうね」
ICU「ずいぶん勇敢なんですね…」
電通「まあね」

電気通信大学、廃校。


〜志〜
東大達のもとへ着いた法政とお茶の水
法政「東大さん…電通さんまで…」
東大「ICUの力は予想以上だった。こうなれば、最後まで戦おう!」
慶應「私もそのつもりです」

中央「法政…」
法政「何?」
中央「もうMARCHは俺とお前だけだ。勝手な言い分だが、MARCHとして共に戦ってくれないか?」
法政「別に卑屈になることはないよ。こっちだって、東大軍を裏切った時期があったし、
   そのおかげで大勢の大学と出会えたからね」
中央「…そうか。あの時の会議では、こうなるとは夢にも思わなかったな」
東大達は覚悟を決めた。煙の中では、ICUの笑い声と大学達の悲鳴が聞こえる。

京大軍基地では、スタンフォードのレーザー兵器がエネルギー充填完了の合図を示した。
京大「………」

  お 前 と 東 大 の タ ッ グ は 日 本 最 強 だ ・ ・ ・ 

京大「………」

  お 前 と

京大「黙れ!全て私の責任なのだ!!もうこれしかないんだよ!!」

阪大「責任はお前だけじゃない」
京大「阪大…!いたのか…」
阪大「京大、確かに戦争の発端人はお前だろう。だが、この戦争で水面下の野望が次々と浮上した。
   皆持っていたのだ、心の底に黒い物を。今回はそれが表面化したにすぎない」
京大「だが…」
阪大「お前に罪が無いとは言わない。だが、お前のこれまでの行動は軍の司令官としては正しいとも言える。
   いかに生き残るか、いかに勝つか…」

〜目覚め〜
京大「………」
阪大「お前が何を考えているかなど、私には分からない。だが、一番大切なのは…ええと…
   ハァ…イライラしてきた」
京大「?」
阪大「はよう決めろや!!骨は拾ってやる!!」
京大「ハッハッハ…」
阪大「………」
京大「口より手が先に出るお前が、よく今まで副司令など務まったと思ってな…やはり、お前はそうでなくてはいかん」
阪大「すいませんでした…」
京大「拾う骨が残るか知らないが、約束は守ってもらうぞ」

ドガシャァァァァン!!!!!

京大はスタンフォードの兵器を破壊した。
阪大「なにも壊さなくても…」
京大「何年ぶりかな、あいつと組むのは…」
準備体操をしながら、京大は基地の外へ出て行った。

法政「ピピピ…ピピピ…」
中央「おい、どうした?」
法政「いや、何でもない。そういや今や俺達って“CH”だな。あえて発音するなら“チ”か?」
中央「あ、ああ…何か余裕あるな、お前…」
法政(電通さん、俺は勝てる相手とだけ戦う男じゃありません!)
東大「煙が晴れてきた。行くぞ!」
かつての東大軍の生き残り全員が叫ぶ。

     『 は い ! ! ! ! ! 』

〜最強タッグ復活〜
煙が晴れると、夥しい死体の山が現れる。しかし、感傷に浸っている場合ではない。
ICU「いよいよ少なくなってきましたね。皆さん…」

東大「勝負はこれからだ…!」
慶應「この場にいる大学は全員お前より上だ!」
法政「例え灰になったって、鼻に入ってクシャミぐらいはさせてやるからな!」
お茶の水「覚悟しなさいよ!!」
中央「青学と立教の仇は取る!」
専修「日大も動けないし、やってやるかな」
東海「捨て駒、盾、好きにして下さいよ!東大さん!!」

医大連の生き残りも同時に奮起する。
高医「医大の誇りを思い知らせてやろう!」
京医「ああ…!」
東北「散った旧帝達の志は無駄にはしない!!」

ICU「元気がよろしい事で…その精神も身体も破壊尽くしてあげましょう。後に今日は記念日となるでしょうね」
最終決戦が始まろうとしていたその時!

     『 私 も 入 れ ろ 』

予想外の展開に、気抜けする一同。
東大「京大…?」
京大「私と組め、東大」
東大「は?」
京大「東都タッグの復活だ」
東大「それも面白いかもな」
京大「そうだろう?」
東大&京大「ハッハッハッハッハ…!」
まったく意味不明のやり取りだが、一つだけ確かな事があった。最強タッグの復活である。

法政(今回の戦争の最大の目的は…“これ”だったのかもしれないな…)

〜圧倒〜
法政「東大さんと京大さんて、タッグを組んでいたんですか?」
慶應「ああ…恐ろしいほどの強さだった」

東大と京大がICUに挑む。
ICU「七武神を超えた私に勝てるとでも?」
東大「京大、行くぞ」
京大「ああ」
ICU「何をする気ですか…」

ズゴッ! ドゴッ! バキッ! ゴスッ! ベキッ! ドムッ! ビシッ!

ICU「ぐおおおおおお!!!」
東大と京大のコンビネーションは完璧だった。芸術的と言える程であった。

ICU「お、おのれェ!!」
ICUも応戦するも、まるで当たらない。東大と京大が美しい舞を舞う中、ただ一人錯乱しているような格好だ。

中央「あのICUが…」
専修「まるで子供扱いだ!」

やがて、ICUが五度目のダウンを喫する。
ICU「何故だ!私の方がパワーは上のはず!」
東大「確かにな…だが、お前では我々のコンビネーションは崩せん」
京大「うむ、残念ながら、な」

法政「す、すごい…!」
高医「これ程とは…東都タッグ…」

ICU「く…同志社、私に力をォ!!」
ICUが再びパワーを高める。しかし、東大と京大の表情は変わらない。

〜圧勝〜
ICUはより速度と力を増し、猛攻を開始する。しかし、東大と京大には当たらない。
ICU「あ、当たらないよ!ど、同志社ァ!!」
東大「東京首都流奥義“幻の江戸城”!!」
京大「京都伝統流奥義“八つ橋ショットガン”!!」

ゴッバァァァアアアァァン!!!!!

ICU「ギょほホオおウウうあア!!!」
東大「そろそろトドメだな」
京大「ああ…」
ICU「グ…ゴキ…ゲゲェ…」
ICUの強固な意志が崩れようとしていた。それと同時に、今までに与えられたダメージが一気に噴出する。

ICU「アガウぅウううウぅゥウウう!!!!!」
ICUの体中から血が噴き出す。おおかた流し尽くした後のICUはやせ細っていた。

慶應「終わったか…当然だな。あの二人のタッグは本物だ…」
中央「あんだけ苦労したのに…」
東北「今までのダメージの蓄積もあるのだろう。何より、ICUの自信が崩れた事が大きい」
見守っていた大学達は歓声をあげ始めた。

法政(何だろ、この不安感は…。なんか嘘っぽいモノを感じる…)

東大「終わりだ、ICU!この長い戦いに終止符を打つ!!」
ICU「オオ…」

ガキッ!!

突然、京大が背後から東大を殴りつける。たまらず東大は倒れる。
東大「ぐはっ…京大!?」
京大「………」