法政の逆襲20〜無事帰還〜

法政達を乗せた脱出ポットは地上へと向かっていた。
CIT「間もなく地上だ!一応衝撃吸収加工はしてあるが、計り知れない衝撃が来るはず。
    頭を伏せて、歯を食いしばっていろ!」

ズオオォォォォォン!!!!!

脱出ポットは京都軍基地近辺に落ちた。
中が満員だったのが幸いし、皆が互いにマットの役目を果たしたため、何とか無傷であった。

法政「いてて…」
電通「みんな大丈夫かい?」
九大「何とかな…」
お茶の水「ちょっと足どけなさいよ!」
ガコッ!
CIT「ぐわっ!」
法政(CITを足蹴に…恐ろしい女だ…)
東北「ひとまず出よう、ここは狭い」

京大軍基地前―――――
早稲田「すごい音だったな…」
慶應「先程の流星群の一つだろうな」

   ザワ ザワ…   ガヤ ガヤ…    ワイ ワイ…

ICU「静かにしなさい。天からの贈り物、と言ったところですか…」
そして、その直後に東大達と神戸・医大連がほぼ同時に到着した。

〜ICUと神医〜
早慶軍に追い付いた東大達。だが、もはやその目的は早慶軍を止める事ではない。
目の前のICUを止める事なのだ。
東大「早稲田、これは一体…?」
早稲田「………」
慶應「もう意地は捨てよう。一橋さんもそれを望んでいるはず」
早稲田「そうだな…」
二人は東大にICUが変貌する一部始終、そしてICUの横暴を話した。
東大「ICU…そういう事か」
樽商「南山も吸収されたのか…あいつに!」
慶應「お願いします。ICUを倒しましょう!!」

一方、神医はICUとの接触を図る。
京医「危険だ、戻れ!」
神医「ICUさん…」
ICU「君は先程の…何の用かな?」
神医「これがお前の秘策だったのか…」
ICU「そういうことになるね」
神医「同志社と語らった夢はどうした!これがその答えだと言うのか!!」
ICU「同志社は私の一部となった。これからは二人で平和を実現させていこうと思う」
神医「なっ…!」
ICU「これからの大学の歴史は私が創る。もう争いは起こりえない」
神医「あれだけ苦悩して得た答えがそんな結論なのか!目を覚ましてくれ!今のあんたはどうかしてる!!」
ICU「苦悩などする奴がおかしい。私の予定表に従えば良いのだから、迷いが生じるスキさえ存在しない」
神医「ああ…もう迷わない」
ICU「それは良かった」
神医「お前を倒す!!」
ICU「迷う前に狂ったか、ハハハ」
神医「“メス乱れ投げ”!!」
ICUは全てのメスを見切り、その全てを弾いた。
ICU「二度は見逃さない。君には天罰を与えよう…」


〜京大の作戦〜
京大軍基地内部・医療室―――――
京大は意識を失った阪大をベッドに適当に寝かせた。
京大(どうすれば良いのだ…同志社とICUとの親交を利用して、ICUを意のままに操るはずが…!
   まさか、同志社がICUに吸収されてしまうとは!!)
阪大「………」
京大(しかもとっさの判断とは言え、阪大を刺してしまうとはな…惜しい駒を使用不能にしたものだ。
   もう少し、下級の駒を使うべきだったな)

京大は寝かせた阪大をそのままにし、考える。
京大(ここで退いて、兵力を蓄えるか?ダメだ…もう有力な大学など残っていないではないか!
   ならば、早稲田達と手を組んでICUを倒すか?いや、それでは京都を日本の大学の中心に出来ぬ。
   ICUと早慶軍をまとめて葬らねば…)

突然、京大は立ち上がった。
京大「…スタンフォードの兵器があるじゃないか!!
   最大出力ならば、早慶軍にもICUにも大打撃を与えられるではないか!
   倒せずとも、弱った所を京大軍で攻めれば勝機は十分だ!!」

京大は用済みとして、地下へしまってあるスタンフォード作の兵器のもとへ向かった。
そして、京大が出て行った後の医療室では…
阪大「…させんぞ」

京大軍基地外―――――
京医「神医ィィィィィ!!!!!」
北大「たった一撃で…!」
ICU「医大なのに、自分の命を粗末にするとは…医者の不養生と言うやつかな?」
京医「おのれ、殺してやる!」

東大「我々も行こう。全員で止めなければ!!」
早稲田&慶應「はい!」

〜叫び〜
東大・早慶医大連合軍とICUの戦いが始まる。
ICUの強さは凄まじく、かかっていった者から次々にやられていく。
名大「何て強さだ!」
神戸「俺はあっちに行きます!」

グニャッ

神戸「何か踏んだな…」
神戸は下を見た瞬間、全身が凍り付いた。
神戸「神医…嘘だろ…」

神戸「何で死んでるんだよ…」

神戸「こんなに近くにいたのに…!」

神戸「俺はお前の戦死の報せを覚悟していた…もちろん再会への希望も…。そのどちらでも無ェよ…」

神戸「バカヤロォォォォォォ!!!!!」
戦場ではこの叫びすら、かき消される。

一方、法政達は脱出ポットから出ていた。
法政「ここは…?」
東北「おそらく京都…だろうな」
九大「京大軍基地の方向が騒がしいな。いよいよ東西決戦が始まったか…」
法政「は、早く行かないと!」
CIT(あそこには…何かいる。七武神すらも超える“何か”が!)


〜〜
辺り一面に戦いの跡が広がる。
あちこちで、負傷した大学らのうめき声が聞こえてくる。

ICU「みなさん、そろそろ諦めたら如何ですか?」
京医「くそ! まだまだだ…」
ICU「あなたのお仲間には、もうほとんど動く事も出来ない状況のようですけど…」

確かにICUの言うとおりだった、
今この場で動けるのは京医・慶応・東大などのリーダー格や、
運良く負傷の少ない一部の大学だけであった。
早稲田でさえも、もう動くことすら出来ない重傷だ。
(もう、どうにも出来ないのだろうか…?)
誰もが、諦めかけたそのとき、一つの大学がものすごい勢いでICUに迫る。

神戸「うおぉぉぉ! 神医の敵だ!」
その手には神医の遺体の衣類から抜き取ったあるものが握られていた。
神戸「殺してやる!!」

〜〜
とっさのことで、ICUにも避ける暇がなかった。

ザシュッッ!!

血しぶきが飛んだ。

血まみれの大学がぱたりと倒れた。

神戸「あ、あ…あ……」

カランとその手からあるものがこぼれ落ちる。

静岡「I…U…さん…大…丈…で…すか…」

深紅に染まった身体で、静岡がささやく。
ICUの無事な姿を認めて、そっと微笑み息を引き取った。

ICU「馬鹿な事をしてくれました…」
にやりと嗤う。
ICU「まあ、虫けらには相応しい末路かもしれませんね」

〜〜
ICUは立ちつくす神戸の頭を軽く握りしめた。

神戸「ぎゃぁぁぁあああ!!」

グシャッ!

神戸の頭は破裂した。

ICU「こんな危険なものを残しておくわけには…」
ICUが神戸の落としたそれにさわろうとすると、バチッと火花が散った。
ICU「…どうやら私にはさわることも出来ないようですね。忌々しい」
ICU「まあ、良いでしょう。
   どうせ、こんなものがあっても私の優位は変らないのですから」
ICUは不敵に頬笑む。


           さあ、粛正を始めましょうか


〜決断〜
北里「粛正だって…?」
ICU「これまでは私の慈悲深い御心が災いし、少なからず手加減をしてしまいました。
    しかし、今からは逆らう者には容赦しません」
慶應「ひるむな、みんな!」

アメリカ―――――
スワースモア「こうなってしまうとは…!」
アマースト「まだ早すぎたのかもしれないわね」
スワースモア「この言葉を教えた私の責任だ。息子の過ちは私の過ち。私が出るしかなかろう」
アマースト「でも…あの子が可哀想…」
スワースモア「やむを得ないのだ」

京大軍基地・地下5階―――――
京大「あったあった…早速運ばねばな…」
阪大「ま、待て…」
京大「もう動けるのか。丁度良い、運ぶのを手伝え」
阪大「力を…合わせろ…早慶軍や医大連と…」
京大「寝言をほざくな。私の目標は変わらない」
阪大「東大もいる」
京大「何ッ!」
阪大「お前と東大のタッグは日本最強だ…。頼む…」
京大「奴と組むくらいならば、ICUの奴隷になる方が幾分マシと言うものだ」
阪大「た、頼む…」
京大「邪魔だ!」
京大は無言で阪大を押しのけ、兵器を持って地上へ上がっていった。

法政達は戦場の近くに来た。
法政「な、何だみんな殺されていく!」
九大「何者だ!あのデカい奴は!」
お茶の水「顔はICUに似てるわね…」
電通「そうだ、あれはICUだ!」
CIT(スワースモアめ…)


〜粛正〜
香医「くばァ…」
共女「いやァ!」
多摩美「ぐわ…」

ICU「次はあなたにしましょうかね」
高医「東大さん、後ろ!!」
ICU「さようなら…長い間ご苦労様…」
東大(しまった…殺られる!)

ズドッ!

東大「な、名古屋…!」
名大「よりによって…お前を庇って…死ぬとはな…ヘッ…」
東大「くゥ…!」
名大も間もなく廃校となった。

愛知「おのれェ!」
愛知医「許さん!」

ズパァァッ

一瞬で二校の首が飛ぶ。その直後、法政達はようやく辿り着いた。
東北「何という事だ…まるで血の池だ…」
お茶の水「せっかく日本消滅を食いとめたのに何でよ!」
九大「こいつが正真正銘の最強の敵ってわけか」
法政「こ、こんな…」
電通「まず落ち着こう。皆の死が無駄になる…」
CIT「奴の力はMITや私以上だ…絶望かもしれん…」
ICU「また新勢力の登場ですか。しかも、旧帝に七武神までおられますね。
    まぁ無意味なのですが…うっ!?」
突然ICUが頭を押さえ、うずくまった。

〜父と子〜
ICU「うぐぐぐぐぐ!!これは…父さんか!」

精神世界―――――
スワースモア『ICU、ここがどこだか分かるな?』
ICU『精神世界…』
スワースモア『息子よ…もはや、お前を殺せるのは私だけ。“魔法の言葉”の責任を取ろうと思う』
ICU『………』
スワースモア『ミッション系大学の力を借り、世に平和をもたらすための言葉“peace”
       お前は使い方を誤ったのだ…』
ICU『私を殺すのですか?』
スワースモア『この精神世界では、お前の強さも無意味だ。精神の強さのみがモノを言う。ぬんッ!』
ICU『がああああああああ!!!!!』

現実では、ICUが頭を掻きむしりながら、悶えていた。
東大「いきなり苦しみだしたぞ!」
高医「力が大きすぎたんだ、きっとそれで…」
慶應「同情はしない。奴は殺しすぎた」
北大「死者を弔おう…愚かな戦いだった…」
法政「そうですね…」

やがて、動かなくなったICUを見て、生き残っている者は怪我人の介抱と死者の埋葬を始めた。
中央「法政か…久しぶりだな」
法政「他の三人は?」
中央「立教と青学はICUに飲まれた。明治は瀕死だ」
法政「そう…」

京医「神戸…神医…ん?何だこれは…」
京医は神戸の手に握られていたものを手に取った。

〜惨劇〜
精神世界―――――
スワースモア『終わったか…息子よ、すまない』

スワースモアはICUの精神の亡骸に近づいた。
ICU『フッ』
スワースモア『………!』
ICU『父さん…君も俗物だ』
スワースモア『何故だ、確かに精神崩壊させたはず!』
ICU『ここでは精神の強さが全て、でしたね?』
スワースモア『ああ…』
ICU『私には同志社がいる。彼がいる限り、私の精神は鋼鉄そのもの…』
スワースモア『ドウシシャ…?』
ICU『もういいでしょう。詮索されるのは好きではありません。さようならスワースモアさん…』
スワースモア『もはや…私でも…止め…のか…』
その瞬間、アメリカにいたスワースモアは廃校となった。

現実世界―――――
樽商「こいつはどうしますか?」
北大「弔ってやろう。そいつの中には大勢の大学がいるんだ…」
樽商「では…」
ICU「誰を弔うのかな?」
樽商「うわ…!」

グシャッ!

北大「生きていたか!“さっぽろ雪まつり”!!」
ICU「祭りなら地獄でやりたまえ」

ズビュッ!

二校は一瞬で廃校と化した。父をも超えたICU、本当の戦いはこれからである。