法政の逆襲5〜〜 (3)

河合「今日、予備校の皆さんに集まってもらったのは言うまでもない。
   現在全国の大学を巻き込んで行われている、この恐ろしい戦争について話し合うためだ」
駿台「この戦争によって、大学の序列がどう変わるか。我々としては非常に興味がありますな」
代ゼミ「そうだな。しかしそれ以前に、この戦争を早く終わらせることが先決ではあるまいか」
河合「その通り。こんな戦争が長々と続けば、我々受験産業にとっても大打撃だ。
   早くこの戦争を終わらせるために、我々予備校サイドでも何かできないだろうか」
東進「そうだねえ〜。でも、まさか我々が戦争を仲裁するわけにはいきませんからねぇ」
河合「う〜む…」

〜〜
代ゼミ「そうだ! 我々の武器『模試』を使うのはどうだろう」
河合「模試か。でもどうするのだ?」
代ゼミ「元はといえば、この戦争は大学同士の権力抗争から始まった。
    そこでだ。模試における志望校判定を操作するのだ」
東進「そうか! 東大京大を始め、この戦争に参加している難関大学の判定偏差値を、極端に下げればいいのか!」
駿台「どうせなら、東大京大を『ものつくり大』くらいのレベルに下げるとおもしろいな」
河合「これはいい考えだ。『戦争をやめない限り、お前ら難関大の偏差値をDQNレベルにする』と脅すのか」
東進「難関大も、結局は我々予備校の模試での高い判定偏差値によって、権力を維持しているに過ぎませんからね。難関大は判定偏差値が落ちたら、かなりプライドが傷付くことでしょう」

代ゼミ「ただ、一つ問題がある。この模試作戦をする場合、全国最大規模の母集団をもつベネッセに協力してもらわねばならん」
河合「それだったら、共催模試をしている駿台に頼めばよかろう」
駿台「私か。ただ実を言うと、私もベネッセとは仲が良いわけでは無いのだよ」
東進「そこをなんとか!」
駿台「しょうがない。ベネッセにこの模試作戦に協力するよう、説得をしてみる」
河合「よし。ベネッセの協力が得られ次第、この『模試作戦』を決行する!」

翌日、駿台はベネッセを説得し、模試作戦の決行が決まった。


〜〜
時は6月。各予備校の模試のデータが公開され、戦争中の難関大たちは皆、驚愕した。

『第1回全統マーク模試 判定偏差値
 東大京大阪大/32.5〜34.9  旧帝大/32.5〜34.9  早慶/35.0〜37.4
 MARCH/32.5〜34.9 関関同立/35.0〜37.4
(ちなみに ものつくり大/32.5〜34.9  足利工業大/35.0〜37.4)』

東大「なんじゃこりゃ! 我々はものつくり大レベルだというのか!?」
早稲田「一気に超難関私大からDQN底辺私大に転落なんて!?」
慶應「ふ、ふざけんじゃねぇ!」


〜〜
そのころ京大軍では…
阪大「おかしいですよ。河合塾、進研、代ゼミ、果ては駿台の模試で、我々難関大の判定偏差値が、極端に下がっています」
京大「う〜む。これはどういう意味なのだ。しかし、我々をDQN底辺私大呼ばわりするとは、侮辱されたものだな」
関学「まったくです。関関同立のプライドにかけて、これは許せません!」

そこに、予備校連合から一通の手紙が届いた。
立命館「こ、これを見てください!」
 『我々予備校は、あなたたちの戦争に反対している。この戦争への抗議として、
  模試においてあなたたち難関大の判定偏差値を下げさせてもらった。
  あなたたちにとっては、偏差値が下がることは堪え難い苦痛でしょう。
  元の高偏差値に戻してほしければ、いますぐ戦争を止めなさい』
関学「そうか…。これは予備校連合の策略だったのか」
九大「どうします? ここで休戦するわけにはいきませんよね?」
京大「もちろんだ。しかし、この低偏差値が続くようだと、受験生の信頼も得られんし…」
立命館「ここは、予備校連合に対して宣戦布告をするべきでしょうか?」
京大「そうだな…。予備校連合など、我々京大軍にしては敵ではない!」

実は、あまりのDQN偏差値に怒った東大軍も同様に、予備校連合に対して宣戦布告をしたのだ。
ここに、予備校連合 vs「東大軍」「京大軍」という、新たな戦争がぼっ発した。
しかし、全国にネットを持つ予備校連合の強さを、難関大たちは知らなかったのだ…。


〜孤独〜
京大の半ば強引なクーデターの中、勢力は次々と分裂。
そんな中、上智の依頼を受けていた法政は一人居酒屋にいた。

法政「なんなんだよ…同志社立命館は行方不明、
   他の関西の大学を説得すれば、なぜか東西は休戦状態…」
その時、店内にいた受験生同士の会話が聞こえた。
受験生A「難関大がほとんど偏差値30台だぜ」
受験生B「どうなってんだ…?」
受験生A「だから俺東海に行くよ、偏差値65だし」
受験生B「そうだな、いくら行きたくても偏差値30じゃあ、ちょっとな…」
法政(な、何だ!この会話は!?)

法政は軽い変装をして、受験生達に話しかけた。
法政「君達、今の話は本当…?」
受験生A「ん?本当だよ、この記事見てみ」
受験新聞の一面には『難関大学の偏差値激減!?』という記事が。
記事にある偏差値表を見ると、難関大という難関大が大幅に偏差値を下げている。
受験生B「どうでもいいけど、アンタどっかで見たような…」
法政「気、気のせいだよ。それじゃ!」

法政「一気に酔いが覚めちゃったよ。世の中どうなってるんだ…?」
居酒屋を出た法政。その時、携帯電話に上智からメールが来た。
ピロロロ〜ン♪
法政「まずいな、催促かな…まだ一校も説得できてないのに…」
理科大とICUが負傷した。戦況は私の予想を大きく上回ってしまった。
 私たちはひとまず身を隠した。君も適当に避難してくれ』
法政「そ、そんな…俺一人でどうすればいいんだ!!」

法政が落胆していると、聞き覚えのあるバイオリンの音色がした。
法政「このバイオリンは………学習院!」
学習院「法政じゃないか。あのMARCH会議以来かな」
因縁の相手との再会。果たして法政のとる行動は!?


〜〜
ここはとある会議室。早慶代ゼミが密かに交渉している。
早稲田「偏差値の件、なんとかなりませんでしょうか。我々があの富士常葉大学と同じ偏差値なんて、恥ずかしくて表を歩けませんよ…」
代ゼミ「そうはいっても、この戦争を早く終わらせて頂かないことには話は始まりません。戦争が終われば、偏差値は元通りにしますから」
慶應「いや、我々はこの戦争を終わらせるわけにはいかないのです。あ、その…、お金なら少しばかりございますが…」
代ゼミ「金で解決などとんでもない。第一、あなたがたは莫大な戦費で、首が回らなくなっているのでは?」
早慶「(図星!)」
代ゼミ「…そうそう、あなたがたに嬉しいニュースです。
    早慶があまりの低偏差値になったことを受けて、代ゼミでは今年の
    『早大入試プレ』と『慶大入試プレ』を取り止めることにしました」
慶應「えぇっ、そんな! 個別大プレ模試は、その大学にとって権力の象徴なのに…!」
代ゼミ「もちろん東大京大など、偏差値が急落した大学のプレ模試も取り止めます。
    代ゼミでは代わりに『駅弁大学プレ』『私立短大プレ』などを行います」
早稲田「(こ、これは堪え難い屈辱! 我々をなんだと思っているんだ!)」
慶應「(プレ模試が無くなるとは大きな打撃! 来年の受験者数の激減は必死だ!)」
代ゼミ「さあ、どうします(藁)?」

〜〜
早稲田「くそ!バカにしやがって! もう我慢できない!」
慶應「先制攻撃! くらえ、“SFCスマッシュ”!!!」
早稲田「よし、“広末ビーム”!!!」
代ゼミ「ぐわぁっ……。そうか、そっちがその気なら…、いくぞ、“白本ラリアット”!!!」
早慶「(つ、強い!)」
代ゼミ「全国に校舎を持つ我が代ゼミにかかれば、早慶などちょろいもんよ!
    いくぞ、“代ゼミスカラシップ”!!!」
早稲田「ガハァッ!!」
代ゼミ「まだまだぁ〜。“代ゼミライブラリー”!!!」
慶應「わ、早稲田、ここはひとまず逃げるんだ!!」
早稲田「うわぁ〜〜」
代ゼミ「ふん。予備校の力を思い知ったか!」

早慶は命からがら逃げ出し、このことを知った東大軍に恐怖が走った。
この戦いの本当の敵は、予備校連合なのかもしれない……。