0353 - 短歌集3

人生の進み具合は多種多様急行、快速、各駅停車

偏差値はたいして伸びていないけど夢への思いは右肩上がり

"逃"げるからしんにょうとって手偏つけ変われる文字と"挑"めない僕

悲しみを薄めたやうな色合ひの入浴剤を今日はためらふ

「オレなんか生きてる意味も無いんだよ!」初めて父が拳をふった

照れながらひとつの傘に身を寄せて触れる肩先ほのかに熱く

実験の揺れる炎を見つめつつウッスラ見える未来の私

「本読んで」かわいく幼いお願いが「何て読むの」に変わった五歳

岸壁に打ちつける波がかっこいい俺はあんなに砕けて散れない

祖父の死を認めたくないだけなのに仏壇に手を合わせとせかされ

折れ曲がり道を外れた信念は二度と戻らぬ時間と同じ

嫌いだった習わせられたこのピアノ鍵盤叩く母亡き今も

あれはダメこれはダメだと言う前にまずは聞いてよ私のやる気

あと少しもう限界かまだいける自分の前に線はひかない

雨にぬれふんわり香る藤の花やさしい雨よいつまでも降れ