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裕福で力あるペルシア人が、召使を従え屋敷の庭を徒然なるままに歩いていた。
すると、ふいに召使が泣き出した。なんでも、今しがた死神とばったり出くわして脅された、と言うのだ。
召使はすがるように主人に頼んだ。一番の駿馬をおあたえください、それに乗ってテヘランまで逃げていこうと思います。主人は召使に馬を与え、召使はテヘランまで、一瀉千里に駆けていった。
館に入ろうとすると、今度は主人が死神に会った。主人は死神に行った。「なぜ私の召使を驚かせたのだ、怖がらせたのだ。」すると、死神がこたえた。「驚かせてなどいない、まして、怖がらせたなど。驚いたのはこっちだ。あの男にここで会うなんて。やつとは今夜、テヘランで会うことになっているのに」