0366 - ZEROの法則;法則9

女に告白したとき、「その気持ちはすごい嬉しい。だけど、好きな人に振られたばかりで、今は恋愛する気持ちじゃないの」と言われる『今』に、なぜか自分がよくあたる

シチュエーション


 18歳の学生(女)と23歳の会社員(男)。二人はバンド「マジカルシャワー」のボーカルと、ギタリストである。
 リーダーでもある男は、「バンド内の恋愛は解散の元凶」と思いつつ、彼女への想いを募らせるばかり。秋を迎えて妙に人恋しくなってきた彼は、彼女が欲しいという思いも増幅され、ついに練習後、彼女を呼び出し公園で告白することにした……。


男:「ごめんね、急に呼び出しちゃったりして」
女:「ううん、どうしたの?」
男:「んー……ちょっとその辺座ろうか」
女:「うん」

 二人、ベンチに座る。

男:「あの……さぁ、えーと……あのね(笑)」
女:「なあに?(笑)」
男:「俺、いつも冗談ばっかり言ってるけど、今から言うことはまじだから」
女:「……うん、わかったけど……なんか相談事?」
男:「相談事っていうか……まあ、とりあえず聞いてよ」
女:「うん」
男:「あのね……最近、好きな人が出来ちゃってさ」
女:「へー、鈴木君って彼女いなかったんだ?」
男:「前の飲み会でそう言ったじゃん」
女:「そうだっけ?(笑) それでそれで? どんな子なの?」
男:「実は、バンドの人なんだ」←回りくどい
女:「え? 由美ちゃん?」←由美ちゃんはキーボード担当である
男:「……由美ちゃんじゃないよ」
女:「……」
男:「……」
女:「それって……どういうこと?」
男:「どういうことって……だから、美樹ちゃんが好きってこと」
女:「……」←俯いてしまう
男:「……」
女:「……」
男:「……彼氏とかいるの?」←俯いた彼女を覗き込みながら
女:「……そういう人はいないけど……」
男:「じゃあ好きな人とかは?」
女:「……いないけど……でも」←顔を上げる
男:「でも?」
女:「わたし、鈴木君のこと好きだよ。でも……わたし、この間、好きな人に振られちゃったんだ。その時、結構傷ついて、だから今は恋愛のことは考えられない。もし、鈴木君がもっと早く言ってくれていればわからなかったけど……」
男:「……今は付き合えないってこと?」
女:「うん……ごめんね。今のわたしって恋愛出来る体質じゃないから……」
男:「そっか……」

 もっとも法則と呼べるものかもしれない。
「今は恋愛する気分になれない」
「今は彼氏と別れたばかりで、人と付き合うなんて考えられない」
「今は彼氏はいらない」
 言い方はいろいろあるが、共通する言葉は「今」。こういう言い方をされると、じゃあちょっと前だったら付き合ったのか、と突っ込みたくなるが、ちょっと前でもやっぱり「今は……」だろう。ひょっとしたら、一番、男を傷つけずに振ることが出来る言葉かもしれない。適度に期待を持たせつつ、男の優しさに頼る。「今は恋愛出来る体質じゃない」などと言われれば、無理矢理「それでも俺と付き合おう」とは言えないだろう。そして、「恋愛対象じゃない」なんていう言葉よりは、遥かにダメージが小さいはずだ。
 ここで更に押すことで、気持ちの強さをアピール出来るとも言えるが、しつこい男とも思われる可能性もある。どっちに転がるかは、男の熱意と女性の恋愛観次第だろう。まあはっきり言って、以前、ZEROの法則で採り上げた「前の彼氏が忘れられないと言われたら駄目」と同じように、もし、告白された対象が自分の好みと合えば、「今は恋愛する気分になれない」が、「今から恋愛する気分になれる」に変わるだろう。

 まあ、そんなもんだと言われれば、そんなもんだ。