0357 - ZEROの法則;法則1

忙しい人はずっと忙しい

シチュエーション

 会社の同僚で、社内ではそれなりに会話するものの、二人きりで出掛けたことはない。男は、現在の煮え切らない関係に終止符を打つために、東京ウォーカー片手に、彼女の家に電話をかけた……。


男:「あ、もしもし高橋ですけど」
女:「え、高橋さんですか? どうしたの?」
男:「うん、今、平気?」
女:「大丈夫だけど、どうしたの?」
男:「えーとさ、この間、新宿ジョイポリスのチケット、友達からもらってさ」←本当は自分で購入
女:「へえ……」
男:「あの、一緒にどうかなぁと思って……」
女:「……え、あたしが高橋さんと一緒にってこと?」
男:「うん」
女:「……」
男:「……」
女:「……」
男:「……」
女:「……いつ?」
男:「えっと、来週の日曜日とか」
女:「ああごめん、来週の日曜はちょっと忙しいから……」
男:「え、じゃあ、再来週の土曜日は?」
女:「うーん、ちょっと無理かもしれない……」
男:「日曜日は……?」
女:「……日曜……日もちょっと忙しいから……」
男:「来月とかは?」
女:「来月もなんかいろいろ予定入っちゃって忙しいと思う……」
男:「じゃあ、再来月は?」
女:「再来月は試験とかあるし、なんかいろいろ用事が入るかもしれないし、忙しくなりそうだから……」
男:「……冬休みは?」
女:「多分、スキーに行くと思うから……忙しいかも……」
男:「来年は……?」
女:「資格試験があるから、やっぱり忙しいと思う……」
男:「じゃ……明日、ファミレスで飯でも食わない?」
女:「明日も忙しくて……」
男:「……」
女:「……」
男:「……」
女:「っていうか、今もちょっと忙しいから……」
男:「……ああ」←撃沈
女:「じゃあ」

 このパターンは男性の方ならよく、経験のあるパターンだろう。多分、この調子で行くと、死ぬまで忙しいと言われると思われる。
 これは、単純に言うと、「行きたくない」わけなのだが、誘っている方は、そうは思いたくなくて、本当に忙しいんだと思い込み、かえって墓穴を掘ることとはよくあることだ。
 客観的に見れば、断り文句だとすぐわかっても、当事者になるとどうしてもそれがわからなくなる。男としては「なんで、そんなに忙しいんだ、飯を一緒に食べる時間ぐらい、その気になれば作れるだろ!!」と逆上するわけであるが、その気になれないから作らないという、大事なことを忘れがちだ。

 似たようなパターンで「お金がないから」というのが挙げられるが、この場合も大抵の場合、断り文句だと思っていいだろう。お金があろうがなかろうが、会いたい人に誘われれば、なんとか都合つけてくるものだからだ。